20年一人で山を歩いてきた僕が、ソロ登山教室を開く理由

はじめまして、登山ガイドで野菜ソムリエの“Vegさん”こと、中谷サトシです。山とやさい Mt.Veg のホームページを始めるにあたり、最初に書く記事は、どうしてもこのテーマにしたいと思いました。振り返ってみると、長い時間をかけて歩いてきた道のりが、静かにこの場所へと導いてくれたように感じるからです。

高校の山岳部で初めて本格的な山に触れ、大学では探検部として世界の辺境へ。地図に名前のない村、誰もいない山の稜線、雪の山で見た、厳しさの中にふっと現れる一瞬の光景ー。
そこで学んだのは、技術よりもむしろ、自然と向き合う姿勢でした。楽しみと危険は表裏一体、でも、そのような中で「どうすれば安全に、でも、心から楽しめるのか?」 その問いかけは、いつも僕の中心にありました。

社会人になってからは、テレビディレクターとして危険地帯や未知の土地にも足を運ぶことが多くありました。
その現場で必要とされた“状況を読む力”や“撤退の判断”は、山で培った感覚と深くつながっていました。
そして逆に、そのような現場の取材で得た経験が、ひとりで山に向かうときの安全管理にも生きてきました。

大学を卒業してからしばらく山から離れていた時期もありましたが、その後の20年以上、僕はほとんど一人で山を歩き続けてきました。

その時間の中で身についた感覚や、小さな失敗から学んだこと。そして、登山ガイド資格の勉強で改めて整理された知識。どれもことさら特別なものではありませんが、これから山に向かう誰かの役に立つかもしれない──
そんな思いが、少しずつ芽生えてきました。

「ひとりで山に浸りたい」
「仲間がいなくても山をあきらめたくない」

そんな気持ちを抱えている人に、そっと寄り添えたらいい。大げさなことを教えたいわけではなく、
ただ、自分の力で歩きたいという想いを支える小さな手助けができれば。

その願いが、ソロ登山教室という形になりました。

目次

ソロ登山は危険なの?一人で歩く山が教えてくれたこと

どんな季節でも、どんな山でも、歩いていると「お一人様」に必ず出会います。
こちらも「お一人様」、すれ違う向こうも「お一人様」。
事情はそれぞれ違うはずなのに、どこか同じ想いを抱えて山に来ているのだろうなと感じることがあります。

「自分のペースで歩きたい」
「山に浸る時間を大切にしたい」
そんな静かな願いを胸に、ひとりで山に向かう人は少なくありません。

一方で、こんな声もよく耳にします。
「一緒に行く人が身近にいない」
「スケジュールが合わない」
「ペースが合わない」
本当は仲間がいれば心強いけれど、やむを得ず“ひとりで行く”という選択をしている人も多いのだと思います。

しかしその裏側で、遭難のニュースは増え続けています。
2025年夏の山岳遭難件数は過去最多の808件、遭難者は917名に上りました(警察庁まとめ)。
もちろんその数字の中にはソロで歩く人だけではなく、グループで歩く人も含まれています。

でもこのデータの中に、見逃せない事実がありました。
それは山岳遭難者の約半数、49.5%が「無事救出」だったということ。

一見すると「無事でよかった」と思うかもしれません。
けれど、この“無事救出”の多くは、疲労による行動不能、軽い体調不良、道迷い といった、ほんの小さなつまずきから始まっています。日常的に運動習慣がない人が、登山という負荷の高い運動をしたときに起こりやすく、特に下山の終盤、体力が尽きたタイミングで動けなくなるケースが多いと言われています。

つまり、「無事救出」は“あと一歩で重大事故になり得たサイン”でもある のです。

僕は、ソロ登山そのものを危険だとは思っていません。
むしろ、一人で歩くからこそ味わえる自由や静けさ、山との深い対話があると感じています。
だからこそ、必要な知識と技術を身につければ、
ソロ登山はもっと安全に、もっと豊かになる。

「一人で歩ける力」を、そっと後押ししたい

一人で歩くことには、たしかにリスクや負担があります。
でも、その“背負うもの”が大きいからこそ、乗り越えた先に見える景色は格別です。
日帰りでも、低山でもいい。
自分の足で、自分の判断で、一歩ずつ進んでいく。
その過程そのものが、静かで確かな成長につながっていきます。

その歩みを、そっと支えたい。
これまでの経験と、ガイドとして学んだ知識を、そのために使いたいと思っています。

装備の選び方、計画の立て方、危険の察知、撤退の判断。
そして、野菜ソムリエとしての視点から、補給や回復の知恵もお伝えします。

“技術”だけではなく、
「自分を大切にしながら歩く」という心の余白を育てること。
それが、僕が大切にしたいソロ登山のあり方です。

Mt.Vegの山の教室として

山とやさい Mt.Veg は、山を案内するだけのガイドではなく、

「自分らしく整うための、小さな山の教室」でありたいと思っています。

ソロ登山教室は、その最初の一歩です。
特別なことを押しつけたいわけではありません。
ただ、山の楽しみ方のひとつとして、そっと差し出したい。
あなたが自分のペースで山と向き合えるようになるための、ひとつの道しるべとして。

山は、歩く人の数だけ物語があります。
その物語が、あなた自身の力で少しずつ育っていくのを見守りながら、
必要なときにそっと背中を押せたら嬉しい。
そんな気持ちで、この教室を開きました。

あなたが山をもっと好きになるための、
そして、自分の足で歩くことをもっと誇れるようになるための、
伴走者でありたいと思っています。

これからこのブログでも、ソロ登山に役立つ小さなヒントや気づきを、ゆっくり届けていけたらと思っています。

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