高尾山の玄関口で出会う、愛らしいムササビの像。
「なぜ、これほど人里に近い山に、多くのムササビが息づいているのでしょうか?」
その答えを知って想像を膨らませながら歩くと、いつもの登山道が「ちょっとした物語の舞台」に変わります。

ムササビがここにいる理由
なぜ高尾山にムササビが暮らしているのか。 その理由をたどると、450年ほど前の戦国時代に行き着きます。
当時、高尾山を天然の要塞としていた北条氏は、 甲斐(山梨)から迫る武田軍に備えるため、山の木々をむやみに切ることを固く禁じました。 これは、日本の森林保護としては“とても早い時期”に出された禁伐の政策だったと言われています。
違反すれば重い処罰が下るほど、強い決意をもった保護でした。
その姿勢は時代が変わっても受け継がれ、 明治へ、大正へ、そして現代へとつながっていきます。
こうして長い年月のあいだ守られてきた森には、 ムササビが好んで暮らす「大きな木のウロ(穴)」が、今もたくさん残りました。歴史が、彼らの家を守り続けてきたのです。

足元と頭上に広がる「奇跡の境界線」
ムササビの暮らしを支えてきたのは、歴史だけではありません。 いま私たちの足元と頭上には、もうひとつの“奇跡”が広がっています。
高尾山のすごさは、標高599mほどの山に、 1,600種類もの植物が生きているということ。 この数は、なんとイギリス一国で見られる植物種とほぼ同じと言われています。 小さな山に、世界がぎゅっと詰まっているような豊かさです。
そして、この多様な植生こそが、 巨木のウロを住処にするムササビの暮らしを、今も静かに支えています。
では、なぜ高尾山はこれほど植物が豊かなのか。 その秘密は、二つの気候帯が出会う“境界線”にあります。
一つは、冬も比較的暖かい「暖温帯」。 カシやツバキなど、つややかな葉を持つ照葉樹が茂る森です。
もう一つは、冬の寒さが厳しい「冷温帯」。 ブナやミズナラ、カエデなど、冬に葉を落とす落葉樹が育つ森です。
本来なら標高差で住み分けるはずの植物たちが、 高尾山では同じ場所で肩を並べて生きている。
世界でも珍しい、植物たちの“共演”が見られる場所なのです。
その象徴が、薬王院へと続く参道。
頭上を覆う木々を見上げながら歩くと、ハッキリとしたコントラストに、参加者のみなさんから驚きの声が上がりました。「ほんとだ!」

左側の南側斜面には濃い緑の照葉樹が、一方、右側の北側には薄い緑、この春芽吹いたばかりの落葉樹が、参道を境に、まるで線を引いたかのように森が分かれて見えるのです。
“調和と循環”。
そんなエネルギーに満ちた森だからこそ、私たちはここを歩くだけで、
どこか心がすっと整っていくのかもしれません。

次回は山でととのう、野菜ソムリエの山ご飯
歴史と自然の物語で満たされた後は……いよいよ本物のお楽しみ!
絶景の中でいただく、野菜ソムリエのプチ贅沢な「かんたん山ご飯」の登場。
「山の上で『じゃがいも&スナップエンドウ』を振る舞う理由は!?。
次回、参加者の皆さんに好評をいただいた“野菜ソムリエのととのうメニュー”を紹介します。



