今回のツアーで最も多かった感想は、こんな声でした。
「登山ってもっとキツいと思っていたけど、意外と楽でした」 「前に高尾山に来たときはバテバテだったのに、今回は余裕でした」 「翌日、ひざの痛みが全くありませんでした」
みなさん、当日までは“楽しみ半分・不安半分”。 それでも終わってみれば、どこか晴れやかな表情でした。
ではなぜ、初心者でも登れるはずの高尾山で、 多くの人がバテてしまうのでしょうか。
答えは、とてもシンプル。 「歩くペースが速すぎるから」 なんです。

あたりまえの落とし穴
「速く歩けば疲れるのは当然でしょ」 そう思うかもしれません。
でも、この“あたりまえ”こそが落とし穴。
実際、今回も私たちの横を、軽装の人たちがどんどん追い抜いていきました。 そのスピードは、まるで駅の階段を駆け上がるような勢い。
ここからは、私が山歩きの教科書としている 山本正嘉先生の『登山の運動生理学とトレーニング学』を参考に、 少しだけ専門的に解説します。

登山は“ジョギング並み”の運動
登山の運動強度は、一般的な無雪期登山で ジョギング相当 とされています。
皇居ランのようなジョギングが1〜2時間だとすると、 高尾山でも4時間前後は歩き続けるわけで、 単純に考えても負荷はかなり大きい。
そんな運動を、駅の階段を上るようなペースで歩いてしまうと—— 運動強度はジョギングを超えて、山でランニングしているのと同じ状態になります。
そりゃあ、疲れて当然です。
ではどのくらいのペースなら疲れないのか?
目安はとても簡単。
駅の階段10段を5〜7秒かけて登るペース。
このくらいのスピードなら、 「歩き」と「ジョグ」を交互に行うくらいの運動強度になり、 多くの人が無理なく歩き通せます。
今回のツアーでは、初心者の方も多かったので、 10段を5〜6秒で登るくらいのゆったりペースで全行程を歩きました。
これが、みなさんの「楽だった」の正体です。

下山も“歩き方”で変わる
登りだけではありません。 下山時には、ひざを痛めない足の置き方や、 ストックを使って負担を減らす方法もお伝えしました。
どれも難しい技術ではなく、 その場で実践してすぐに効果を感じられるものばかり。
山登りは、歩き方次第でもっと自由に、もっと楽しくなる
今回の高尾山で改めて感じたのは、 登山は「体力勝負」ではなく「歩き方のデザイン」だということ。
ときには歴史に思いをはせたり、無理せずペースをおとしてみたり、旬の野菜をそっと取り入れてみたり・・・
そうすることで、体の声が聞こえるようになり、 自然の中にいる自分がふっと軽くなる。
4回にわたる連載でお伝えしてきた“ととのう登山”のヒントが、 これからの山時間をもっと自由に、もっと心地よくしてくれたら嬉しいです。



